2015年1月27日火曜日

業界の嘘:生地の厚さ

業界の嘘と違うかもしれませんが・・・


旅館、ホテル様とのお話しで、
「この浴衣は物が良いねぇ、生地が厚くてしっかりしている。」

しっかりしていかどうかはさておき、その浴衣、中国製の安い生地を使ってますよ。


どうも厚い生地=良い物、という認識があるようで、それに気が付かない新人の頃は頭の中が?となっていました。


厚い生地と言っても色々な理由で厚くなります。
浴衣生地の場合で言うと、織り方は普通平織りなので後は糸の太さになります。
太い糸を使えばその分厚くなるし、細い糸を使えば薄くなります。

均一に細い糸を作る方が難しく、また使われる綿も良い物が求められます。
細い糸が出来た後、それを織るには糊付けが必要ですが、その際密閉した部屋で無いとゴミが付いてしまいます。そのため細い糸の糊付けには空調設備が欠かせません。

色々と書いてしまいましたが、要はインフラと技術と良い材料が無いと細い糸は作れません。







と言う事は、単に厚さだけで”良い生地””悪い生地”の判断はつかないと言う事です。




一般的な日本製の本仕立ての浴衣は、30/30の特岡生地。
一般的は日本製の旅館浴衣は、30/20の特岡生地。

中国製の旅館浴衣は、20/20生地(シーチング)。
20番手の方が太いので、中国製の浴衣は厚くなります。
シーチングの方が流通量は多いので、生地価格も安くなります。
ただ元々衣類に使う生地では無いので、糸の打ち込みが甘いです。

洗うと良く縮むのが中国製・・・・


良い生地は細い糸を使っていても、打ち込みがしっかりしているので縮みません。
縮まない=型くずれを起こしません。




2015年1月24日土曜日

半天の型紙(プリント用)を買いました

ふらりと寄った骨董市で、型紙を買っちゃいました。

「何の型紙がわからないよ、1枚500円だよ。」


多分ですが、これは半天の型紙だと思います。
必要な数枚だけプリントするための型紙ではないでしょうか?

紙で出来ていて、色が乗るところは切りぬいてある。
所々に絹糸で補強が施されています。

このつくりは大量に刷るためのものではありません。
数枚だけ作る物です。




型紙 プリント




今、浴衣の染めの型紙は京都か伊勢で作ります。
浜松市は浴衣の産地ですが、型紙を作れる人はいません。
仕事が集まらないからと聞いた事があります。


伝統的な物を作れる人がどんどん少なくなっていくのは、本当に何とかしなくてはいけません。



2015年1月22日木曜日

旅館の浴衣とは

旅館の浴衣と一般浴衣の違いは・・・、と説明するより、同じ浴衣と名前が付いているけどぜんぜん別物だよ、と言った方が良い気がするこの頃。

そう、仕立ても生地も別なのです。
だって使う目的が違うから。


1、生地は30/20綿生地、もしくはTC30/70。
2、小巾もあるけど広巾生地も良く使う。
3、顔料プリント
4、衿巾、奥身が狭い。
5、袖が筒袖


大きく言うと、上記の事が旅館浴衣の特徴です。



日本製 旅館 ホテル 業務用 浴衣



最近では一般用の浴衣と変わらないような柄も出てきましたが、以前はデザインも違っていました。

・濃い色のべた部分は作らない。
・ベタ分を入れる時は地紋を入れる。
・色は3色までしか使えない。


どれもこれも、着用→洗濯を毎日繰り返して使われる事を目的としています。

「旅館浴衣は浴衣の偽物」そんな言い方をする人もいますが、旅館浴衣は使う目的に沿って作られたとても機能的なものだと思います。







2015年1月20日火曜日

作務衣パンツの縫製ミス

浜松市伝統の木綿織物「遠州縞」。
今ブランド化して「遠州綿紬」として販売していますが、弊社ではその遠州綿紬製品の製作も請け負っております。

納期に間に合わず、やいのやいの言った挙句に出来上がってきた作務衣のパンツ。
ざらっとみてそのまま納品へ・・・。
良かった良かったと思ったのは、本の一瞬。
すぐに電話がかかってきて呼び出しです。


「このタグの付け方、どう思う?(怒)」



遠州縞 作務衣 パンツ


多分仕上げた後にタグの付け忘れに気が付いて、慌てて縫い合わせたのでしょう。
でもこれは酷い、酷すぎます。

ファスナーの内側にタグなんて!
これで商品として通用すると思っているのでしょうか。

もちろんすぐに縫製工場に連絡をし、当日中に直して事なきをえました。


こちらの縫製は日本国内。
繊維業はいま斜陽産業の代名詞のように言われています。
しかも縫製に携わっている人の多くがかなりの高齢となっています。
工賃も低いため、若い人はほとんど入ってきません。


工賃の安さに走り海外へ生産拠点をうつしたコトの付けが、回り回って今来ているような気がします。
でも世間的には、なかなかわかってもらえないんだなぁ。










2015年1月16日金曜日

浴衣のカタログ

一般用の注染浴衣は、基本的にカタログはありません
毎年新しい柄が出来上がり、それをその年のうちに売り切ってしまいます。

一次問屋さんが生地を作り、それを二次問屋さんが選んで買い取り、二次問屋さんにて呉服屋さんが選んで買って店頭に並びます。

新柄が出来て、それでカタログを作って、カタログから選んで注文する物ではありません。
なので二次問屋さん、呉服屋さんのセンスによって、合う合わないといったデザインが出てきます。


一方、旅館浴衣の場合、基本的には旅館やホテルのオリジナルのデザインなのでこれまたカタログは有りませんが、オリジナルを作るほどの規模でない場合は定番の浴衣があって、そのカタログの中から選ぶ場合もあります。



定番品 日本製 旅館浴衣



旅館浴衣の定番品は、いつまでたっても柄は変わりません。
それは旅館やホテルにとって浴衣は消耗品で、定期的に補充が必要です。
その時に同じ柄が無いと大変困ってしまいます。

そのために、敢えて柄を変えずにいます。
逆に新しい柄を作った場合には、その後何年も作り続けなくてはいけません。



最近、「浴衣が欲しいんだけど、とりあえずカタログ送ってくれない?」と言った御要望が、一般浴衣・旅館浴衣共に増えてきました。
毎回、説明するのですが、問い合わせは増える一方で、あれ?僕の方が常識がおかしいのかなぁ、と考えたりしてしまいます。




2015年1月14日水曜日

浴衣の販売に関しての思い

愚痴みたいなものですが・・・


ユニクロやイトーヨーカドーやイオンなどで売られている浴衣があります。
浴衣と帯と草履がセットになって、数千円で売られています。

少し前は「安く浴衣が販売していれば、普段浴衣を着ない人も気軽に着られるから良いね♪」なんて思っていましたが、最近その考えを改めました。


本来浴衣は生地を買ってきて、自分で仕立てるか出来る人に仕立ててもらう物でした。
その浴衣に合わせて帯を選び、草履を選ぶ物でした。

そこここでセット浴衣が販売された結果、浴衣には帯と草履が付いている物という常識ができあがってきました。

また数千円で販売されている仕立てられた浴衣のほとんどが海外製。
しかも安くするため、生地は化繊、柄はプリント
化繊自体通気が悪いのに、プリントでふたをしたら暑くてかないません。

最初に来た浴衣がこの安い物でしたら、浴衣=暑い、着心地が悪い、もう着ない、といったことになりかねません。



浴衣 中国製



価格の安いセット浴衣は、浴衣を切る人のすそ野を広げたのではなく、浴衣文化を壊したのではないでしょうか。

また数千円という価格は、浴衣自体の価値を下げてしまいました。
数千円というのは、異常な価格です。
以前なった、千円ジーンズと同じような感覚の商品です。
(千円ジーンズはデニムではなく、カツラギ生地を使って価格を下げました)



日本の伝統文化を壊す物、そんな思いでセット浴衣を眺めています。



※ユニクロは現在浴衣の販売をしていないとの御連絡を受けました。
きちんと調べずに記事に乗せてしまった事をお詫びいたします。



また昨今の円安、海外の人件費の高騰で数千円のセット浴衣の販売が無くなる可能性があります。その場合、上記の販売店で販売が行われない可能性も出てきています。浴衣に限らず繊維業界を取り巻く事情は日々変化しております。
「セット浴衣のせいで浴衣に対する世間の常識が変わってしまった。」という趣旨として記事をよんでいただければ幸いです。

2015年1月13日火曜日

富士かもめ (雪)ガーゼ晒

弊社の定番晒しの中の「雪 ガーゼ晒」ですが、廃番が決まりました。
あ、でもすぐじゃありません。
まだ製品の在庫も有るし、工場内には糸も残っています。

じゃあ、いつまであるの?と言うと、工場内の糸の在庫がある限りになります。



雪 ガーゼ晒 日本製 業務用


雪ガーゼ晒 日本製 綿100%(1反=9m)
http://item.rakuten.co.jp/ryokan-yukata/sa-j13/



こちらのガーゼ晒は、小さな工場で織られています。
そこの工場の社長が倒れた後、奥さんと従業員の二人で織っていたらしいのですが、よる歳なみには勝てず、体も大変だし、そろそろ終わりにしようか、と言うことらしいです。

なので在庫がある分は販売できますが、いつまで有るかは分からない状態です。
 (業務用として、一気に500反とか買う人がいるとあっと言う間に無くなります。)


繊維業界は高齢化がとても大きな問題となっており、こんな感じで一つ一つの商品が無くなっていくのを見ると、やるせない気持ちになります。


2015年1月7日水曜日

浴衣の着崩れ防止ストッパー

面白い商品を見つけました。

和服の着崩れ防止ストッパー」です。

着物も浴衣も、着なれない人はどうしても前がはだけてしまいます。
腰紐で固定しても、やはり衿が崩れてしまいます。

「衿がはだけるのは、帯の所がしっかりしていないから」 と言う事で作られたのが、帯に当たるところに張るシリコンゴムのストッパーです。



浴衣 着崩れ防止ストッパー




男性ですと腰骨のところ。
女性ですとウェストに。

帯で押さえる部分にアイロンで張って、布のずれを防ぐ物です。


今までありそうでなかったもの。
本来は着物や長襦袢に付ける物ですが、もちろん一般浴衣や旅館浴衣に付けても大丈夫。

面白そうなので、さっそく自前の浴衣で実験してみます♪